スポンサーサイト

.-- -- スポンサー広告 comment(-) trackback(-)
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

「私の美の世界」

.11 2009 comment(0) trackback(0)
森茉莉さんが、大好き。
特に一番好きなのが、「私の美の世界」。

森茉莉(1903~1987)
かの森鴎外の娘で、鴎外の溺愛を受けて成長した永遠の少女。
茉莉さんが紡ぎだす言葉はどれも美しくて、小説も大好きだけど、特にエッセイが素晴らしい。
彼女のありとあらゆる方面への美へのこだわり、美学や流儀といったものが彼女独特の方法で語られて、本当に茉莉さんだけの世界が出来上がっている。

自意識過剰で、自信過剰。
好きなものは大好きだけど、そうじゃないもの、自分の感覚に合わないものは徹底的に批判する。
いつまで経っても少女。悪く言えば幼稚・・・?
我儘で、癇癪持ち。
気分屋。
いつもぼ~っとしている(ように見えるらしい)。
フランスかぶれ。
食いしん坊。
と・・・
こんな風に思いつく限り、茉莉さんについて列挙してみると、何だか結構嫌なやつなんだけどw、そうじゃなくて、それが全部良い風に生きているのが茉莉さん。
というか、最早これこそが茉莉さんの良さである、と言えてしまう。
本当に凄い人だ。



「私の美の世界」では、衣・食・住の様々なことについて語られている。

まず、初めは食について。
私自身も、本を読んでいると必ず食事のシーンが気になってしまうので、茉莉さんの気持ちはわかるのだけど・・・
茉莉さんは卵、紅茶、麺麭(茉莉さんについて語るのなら、”パン”は必ずこう変換しなければならない)、などなど、口に入るものにも全てにこだわりがあるのだけど、この章で特に好きなのが、ビスケットについて書いてあるところ。

ちょっと抜粋。
「ビスケットには固さと、軽さと、適度の薄さが、絶対に必要であって、また、噛むとカッチリ固いくせに脆く、細かな雲母状の粉が散って、胸や膝にこぼれるようでなくてはならない。
そうして、味は、上等の粉の味の中に、牛乳と牛酪の香いが仄かに漂わなくてはいけない。
また彫刻のように彫られている羅馬字や、ポツポツの穴が、規則正しく整然と並んでいて、いささかの乱れもなく、ポツポツの穴は深く、綺麗に、カッキリ開いていなくてはならないのである。
この条件のどれ一つ欠けていても、言語道断であって、ビスケットと言われる資格はない。」

こんなにビスケットについて真面目に語る人は、今までもそしてこれからも、ただ一人として出ないと思う!
それぐらい凄い・・・と思うし、個人的にここの部分は、この本の中で一番好きかもしれない。
これを書くの、とても楽しかったんじゃないかな、と思ったり。

これを読んでから、茉莉さんのお眼鏡に適いそうな「ビスケット」を探しているけれど、なかなか見つけられず。
一番近くて、森永のマリービスケット?
どうやら、高価すぎるものだと、また「牛酪が多すぎたり、甘すぎたり、色は濃過ぎ、妙に気取って形も様々で、それにビスケットというよりデセエルに近い。」と気に入らないようなので、難しい。


そして、身の周りのものの話。
彼女の美的感覚を表すものとして、よく色の話題が出てくる。
それもすごく好き。
想像するだけでも、美しい色の数々。

例えば、
「昔見た伊太利の空、ボッティッチェリの「春」の画面にある空、女神の羅の微かなオリーブ色、同じく「ヴィーナスの誕生」の海の薄い透明な緑、その画面に散っていた花々、明るい空の下の、澱み腐敗したような運河の鈍い緑。
又はシンガポオルやペナンの明るい透った海の薄緑、アマルフィの海岸の檸檬の黄色、僧院を改造したレストランの、白い円柱や廻廊に落ちていた野薔薇の影の薄紫、巴里のキャフェの、フランボワアズ入りのアイスクリイムの、牛乳をまぜたような薔薇色。」

この絶妙な表現。
なんとも言えず、文章の響きだけでも恍惚とさせられる。
言葉の選び方、使い方にもかなりのこだわりがあるのが、読んでいてすぐわかる。
鴎外も相当なこだわり人間だったようだけど、茉莉さんに至っては、もうそれだけで世界が出来上がっているのだから、本当に凄い。


あとは、ヒュウマニズムについて、旧仮名遣いについて、本物の贅沢について・・・
などなど、何においても、茉莉さんと言う人は繊細で独自の美の観念を持っている。
奔放で、無邪気で、頑固な美的感覚。
それは、時代とか、もちろん流行とか、そういった周りのものに左右されることのない、確固とした概念。
それを持っている、ということは、何よりもその人自身を美しくさせる、と思う。

「私の美の世界」、是非読んでみてください。


スポンサーサイト

comment

post comment

  • comment
  • secret
  • 管理者にだけ表示を許可する

trackback

trackbackURL:http://jyunsuikaidan.blog19.fc2.com/tb.php/182-87e255f3
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。